ゲンロンカフェの対談イベントに行ってきた

今日はこれに行ってきました。

ハッカーズカフェ橋本和幸×清水亮「関数言語ナイト! 記号処理、オブジェクト指向、幻のLISPマシンSymbolics!」PODCAST アキバ系!電脳空間カウボーイズ公開収録 @shi3z

enchant.jsでおなじみのUEI清水社長が対談ホスト、ゲストはシンボリクス社(LISPマシンベンチャー)、スクウェア、EA(米国大手ゲーム会社)、nVidiaを渡り歩いている凄腕のLISPプログラマである橋本和幸氏、ということで凄く期待して聴講。場所は五反田駅からすぐのところにあるゲンロンカフェ。

会場にはLISPマシンであるシンボリクスなんとかっていう約25年前の製品が動作してプロジェクタで画面を見せながら実際に操作しながら対談する、というなかなか他では見られない貴重なものでした。Machintosh2の拡張ボードにLISPボードをさして、周辺デバイスはMACのものを拝借するという仕組みらしい。

LISPマシンというのは(他にも色々あるんだろうけどこのシンボリクス社のやつは)ハードウェアでLISPのオブジェクトを演算処理することができて、今の普及しているコンピュータとの一番大きな違いはどうやら、

「OSとアプリケーションの差が明確に存在しない」

ということのようだった。そして、メモリ空間という概念もない。つまりアプリケーションが独自のメモリ空間を確保しそれを占有して使うという方式ではないのだ。プログラムが生成するオブジェクトは全てLISPマシンの管理下におかれ、ユーザはLISPマシンのコンソール上から全てのオブジェクトにアクセス出来る。なので、ソフトを動作中にプログラムを付け足して拡張したり、データを保存せずにプログラムだけ再起動したり、といった普通のOSでは出来ないようなことが簡単にできる。

これは面白かった。じゃあ今のパソコンやスマホがなぜそういう仕組みになってないのかと考えてみたが、たぶんビジネスモデル上の都合によっているのだと思う。アプリケーションの開発者がそのアプリケーションの利用者からお金を徴収するというモデルだと、個々のアプリケーションはブラックボックにして「マッシュアップ出来ないように」しなければならない。すなわち、権利所有者を明確にするために、アプリケーションはそれぞれ独立している必要がある。また、LISPマシン方式には、セキュリティ上の問題もある。クレジットカードを扱うアプリを動かしたとして、そのアプリが別のアプリから動作を変えられる構造になっていたらまずい。

けれど、ワークステーション的な用途であれば、むしろセキュリティやアプリの所有権よりも仕事の効率のほうが重要な場面はたくさんあるだろう。シンボリクス社のLISPマシンは3Dのモデリングソフトが一番のキラーアプリとなって、それなりの販売実績を重ねたそうな。でも結局はビジネス的に成功せず会社はつぶれてしまったそうだが。

橋本さんご自身の経験のお話も凄く面白かった。LISPマシンの流儀、プラクティカルにLISPを使うということ、ゲームエンジンの内部で使ったプログラミングテクニックマッシュアップ的なやり方でプロトタイプを3日で作ってクライアントが発注先として内定している他の会社から受注を奪い取った話、ファイナルファンタジー7の開発周りの話、シリコンバレーで3年くらい働いてそろそろ飽きたと思ってた頃にあのテトリスのライセンスオーナーからハワイへ来て一緒にビジネスやらないかと誘われてセカンドライフをさらに強化したような3D空間サービスのベンチャーを立ち上げた話、他にも濃い内容で非常に楽しかった。

橋本さんはどちらかというと経営よりもガチエンジニアという感じではあったけど、技術戦略がビジネスをどう左右したかという点についての言及はとても多かった。

なんだか、自分、忘れていたよ、純粋にモノを作って、腕利きのエンジニアとして認められる嬉しさ、みたいなのを。

明日からまた頑張ろう。あと、LISPマシンの設計思想は大いに感銘を受けたのでこれから開発していく製品にも良さそうなところは取り入れていこう。