「2013年: サードパーティクッキーのうまみが薄れる年」

AdExchangerに10/15掲載の記事より。

(原文の著作権者に許可を取っておりません。問題ありましたら isobe あっと sciencegeek.jp までご連絡ください。)

「2013年: サードパーティクッキーのうまみが薄れる年」

「データドリブンシンキング」は、メディアにおけるデジタル革命についてメディアコミュニティのメンバーが執筆するフレッシュなアイディアを含んだ記事です。

今日のコラムはPubMatic共同創設者でCTOのAnand Das氏が執筆しました。


まだ10月、つまり一年を総括するには早すぎるけど、ただ一つ既に確かなことがある。それは2013年はサードパーティクッキーの終わりの始まりの年だ、ということだ。

アドテク産業からの批判を軽視するFirefox、そしてグーグルやマイクロソフトは、いずれも個人を特定しないIDの提供に向けて動いており、それはアドテクの新しい時代のへの移行を明らかに示すものだ。

しかし今後具体的にどうなるのかについては全く見えない。アドテク市場に大量に出てきているソリューションを詳しく見ると、多くは不完全なものだ。例えばある企業は広告主自身を登録し全世界でオプトアウトできるようにするモデルを開発している。そのブラウザ企業は独自の識別ソリューションを開発していると認めた。(訳注:訳者はこれの意味が分かりませんでした。どなたかわかりましたらおしえてください)

他の企業はクッキーに基づかないブラウザ識別モデルを開発しようとしている。これは有望なアイディアであり、デバイスをまたがる消費者を見ていくことにもつながり、パブリッシャ、広告主、そしてユーザに真の価値をもたらしうる。

しかしこの手の手法は明らかな問題がある。すなわち、(広告を打つ側での)適切な使い方や、ユーザ側にとってはトラックされないようオプトアウトしたりある種の広告が配信されないようにしたりする方法をどうするかという問題だ。

こうした問題に業界としてどう応じるのだろう?絶対確実なユーザ識別子を収集して活用できることが保証される、いわば銀の弾丸、鎮痛剤とも呼べるようなものは残念ながらないのだが、同時にそれは厳格なプライバシーポリシー標準を確実に順守することを意味する。我々は「突き詰めれば欠陥はあれど良好な技術」の登場は歓迎しつつも、迷いがちな議論に焦点を当てていることを自覚していなければならない。私が語っているのは、広告主でもエンドユーザでもなく、パブリッシャについてだ。

サードパーティクッキーがあると、それが良い広告でもパブリッシャにとって機会損失となる。なぜならユーザへのクッキー配布をパブリッシャはコントロールできないからだ(訳注:サードパーティクッキーなんだから当然)。もしパブリッシャに、自身で集めだデータ(ウェブサイト上のユーザについての知見)の上で起きることをコントロールさせることができれば、広告主からの大きな需要に対してパブリッシャ自身に決めさせることができるだろう。言い換えると、パブリッシャがユーザを効率よくターゲティングするのに自身のデータを活用できるようになるだろう。

パブリッシャ、広告主、ユーザのニーズを一緒に満たすため、個人との関係(訳注:1to1マーケティング的なこと)についての考えを減らし、集団についてより多く考える必要がある。パブリッシャどうしはお互いに同期する必要がある。

これにはいろんなやり方がある。例えば、パブリッシャがめいめいで集めたユーザIDをパートナー同士で共有すれば、ユーザ登録の仕組みをもたずにサービス運営してるパブリッシャでも集めたデータに基づいたユーザターゲティングが可能になる。このユーザIDを使う手法が適正にオープンで標準的なものになれば、パブリッシャはプライバシー侵害からユーザを守ることが出来る。このアプローチは、パブリッシャのネットワーク上で誰でもいつでもある広告をオプトアウトする、ということが出来る。

同じ課題に対してアプローチはいっぱいあるかもしれないが、成功するソリューションはテクノロジの面白さやアルゴリズムの進歩を反映するけれどもビジネスのコアはそのままで変えないだろう。それはコンテンツをパブリッシュする者、それを消費する者、そこへ広告を出そうとする者、という3者間の関係だから。

我々が専らやるべきはこの3者関係を出来るだけスムーズにすることだ。そうするために我々はサードパーティクッキーよりも良いツールを持っている。

訳後感

PubMatic社はサプライサイドの雄だけあって、事業コンセプトが明確だと思いました。特にモバイル広告の進展は(個人を特定しないアプローチ、記事中ではcommunal(集団)ということばが使われてましたが)不完全な情報に基づいた集団へのターゲティングという考え方が重要になると私も思います。

プライバシー保護やパブリッシャの機会損失の低減というメリットがある反面、デマンドサイドではIDによらない買い付けが必要なのでリタゲのようなバブリーな商材が作りにくい面があるかもしれません。ただ、個人的には健全な方向性だと思います。

プログラマティックによるメディアの買いたたきに歯止めを掛けるエコシステムとして、このPubMatic社の戦略は大いに期待したいところです。

デマンドサイドのプログラマティックを突き詰めると、金融でいうところのリーマンショックのような感じになって、メディアビジネスを壊滅させかねないんじゃないでしょうか。アドファイブ社でも「広告というマネタイズ手法があるおかげで有益なコンテンツが社会的に量産されるエコシステム」を理想として掲げ、実現に向けてサービスを順次リリースしていきたいと思います。