いつビジネスプランを作るか?

毎日ブログ書く宣言からのべ16日目。

昨日、英語で記事を書きかけたものの挫折し、日本語での執筆をつづけることにしました。

今日のテーマは、「いつビジネスプランを作るか?」です。

プログラミング未経験者に「アーキテクチャ設計」が出来るか?

起業する人は必ず「ビジネスプラン」や「事業計画書」を作るべきだとされています。その理由は、自分の始める事業について客観的に説明できるレベルまで理解していることが、不確実要素の多い新規事業立ち上げにおいて重要だから、とされています。確かに理屈の上ではその通りだと思いますが、私は起業する前に事業計画を作ることは(シリアアントレプレナーや新規事業立ち上げの経験が一定数ある人でない限り)、ソフトウェア開発にたとえたら「プログラミングしたことないのに、製品レベルのソフトウェアの全体アーキテクチャを設計する」ことに似た作業だと思います。つまり、「やらないよりははるかに良いことだけど、どんなに頑張っても合格レベルに達することは100%不可能」という類の話だと思うのです。

ソフト開発スキルの獲得プロセス

私のソフト開発経験に照らすと、プログラミングやったことのない人がソフトウェアを作り上げようとするときに取るべきステップは、以下の通りです。

  • まずサンプルプログラムを実際に動かしてみる
    • どうしてそのサンプルコードでその動きになるか考える
    • そのコードの一部を変えたら動きがどうなるかを自分なりに予想して検証してみる
  • 様々なライブラリの使い方をサンプルプログラムを通して身に着ける
  • アプリケーションプログラムを一つ自分なりに作り上げてみる
    • スパゲティコードでも何でもいいからとにかく作り上げる
    • 作り上げたら、似たような別のソフトのソースコードを読んで自分のコードと比較してみる
  • プログラミング言語の文法の詳細を学び、デザインパターンやテスト方法論について学ぶ
  • 他人が使えるソフトウェアを作って数か月メンテ・サポートを経験してみる
    • ソフトウェア製品開発の仕事をしたり、社内システムを作ったり、フリーソフトOSS)を作って公開したり、と手段はなんでもOK

この手順で最後まで達すれば、プロのソフト開発エンジニアといえるレベルになり、プログラムを書く前にある程度の設計を行ってプロジェクトの「確度」を上げることが可能になるでしょう。天才は別ですが、多くの凡人にとって先を見通すには経験が必要だと思うのです。では、起業・新規事業立ち上げの場合、「未経験」と「ビジネスプランを書いて成功の確度を向上させられるレベル」との間にどんなスキルギャップがあるのでしょう?

起業スキル獲得におけるボトムアップトップダウンのサンドイッチ

上記のソフト開発において着目すべきは、「サンプルプログラム」について試行錯誤するフェーズと、「独力でアプリケーションを作り上げてみる」というフェーズの両面、いわばボトムアップトップダウンの両面からサンドイッチ式にスキル獲得に向かっている点です。そして「全くの無知な状態」からの初めの一歩としては、ボトムアップにならざるを得ない、というのは真実だと思います。そしてボトムアップで基礎を固めるだけだと全体像を把握できない、という意識に到達したところで試しに全体を通してやってみる、というのが自然なステップアップだと思います。では起業におけるボトムアップって、一体何なのでしょう?

起業スキル獲得におけるボトムアップ

きっと起業のボトムスキルには、以下のような「基礎」が含まれるのだと思います。

  • 飛び込みで会えない人にどうにかしてアポを取る
  • 製品/サービスのコンセプトを伝えて100万円以上の資金調達をする
  • アルバイトやインターンを雇い、作業をしてもらい、千円以上の給与を払う

これは、ソフトウェア開発において「サンプルコードを実際に動かしてみる」くらい「敷居が低い」ものであり、かつ、「大きなソフトウェアを作る礎として重要」なものだと思います。そして、上述のソフト開発の場合と同様重要になってきそうなのが、

  • 自分なりに少しやり方を変えて結果がどうなるか予想して検証してみる

というステップです。多くのソフト開発者はこの簡単なタスクを物凄く重視しています。「少しやり方を変える」というのは具体的にいうと、例えばアポ取りであれば「先方がミーティングの場を設定する理由づけを色々と変えてみる」というのが考えられます。パワポで資料を事前にメールしてみたらどうか?、事前に送るのは箇条書きの内容だけで、ミーティングの場でパワポの印刷物を渡すのはどうか?、アポを取る前の1か月くらいは一週間ごとにメールで情報提供して興味を喚起するのはどうか?、等々、色々な手段が考えられます。しかし、このようなステップは起業してやりたいことと遠回りな気がしてしまいます。そのあたりの近道と遠回りのバランスはソフト開発の場合はどうでしょうか。恐らく、ある程度のアプリケーションを想定し、それに関係しそうな試行錯誤をすることが多いと思います。例えばミクシィのようなSNSを作りたい、と考えているときにコメント文をDBに登録したり、DBを参照して文章をWeb画面にレイアウトしたりする部分は、色々な試行錯誤をする価値があります。いっぽうで3Dグラフィックやアニメーションのようなゲームで必要とされるような手段は最初の段階ではそれほど習熟する必要がないでしょう。
そういう風に、ある程度自分のやりたいビジネスや実現したいビジョンに関係ありそうなタスクで、自分なりに考えて試行錯誤すべきでしょう。

起業スキル獲得におけるトップダウンな側面

基礎をいくら固めても、サービスをお客さんに提供して企業を運営していく姿というのは見えてこないでしょうから、やはりトップダウンで未経験なりにビジネスを回す経験は重要です。これは

  • 何らかの自社商品・サービスで見込み客から実際に1円以上を売り上げる

という一点に尽きると思います。このステップはソフト開発では「何でもいいからテーマを決めて、下手でもいいから1個のアプリケーションを最後まで作り上げる」というステップに相当し、、ビジネススキルに当てはめると「赤字でもいいから一円売り上げてみる」ことに相当すると思います。この「赤字でもいいから1円売り上げる」というのは、結構重要なことではないかと思います。ビジネスプランを作る際によく言われる粗利益率やキャッシュフローについて熟考せよとか、継続的なビジネスモデルとかとか、そういうのは全部「供給者の都合」であってお客さんが何かを買う理由の1義的な要因ではありません。つまり「お客さんが実際に買う」ことの発展形として「(供給者として)持続可能なモデルであること(つまり、儲かること)」を位置づけるべきだと思うのです。ソフト開発になぞらえれば、まずアプリケーションとして動くことが第一で、中身の効率や拡張性などはその次のステップだというのは当然のことですが、起業スキルとして「赤字でもいいからとにかく売る」のが第一に来るという考え方はパッと理解しにくい気がします。もちろん、「動くものを作れる」ようになった後、「効率や品質の良いソフトを作れる」ようになるまでにはさらに必要となるスキルはたくさんありますし、最初に作ったものをそのまま改造していって最終的に良いものに変えていくことが難しいことも少なくないでしょう。プログラマなら誰でも経験する、「1から書き直したい病」というやつです。しかしこと起業家となると、なぜか「一からやり直したい病」になることは少ないと思われます。むしろ「未経験のまま一発で成功させる」ことを意識して行動する人であふれかえっています。それはおそらく、プログラミングは機械相手のスキルであり、新規事業立ち上げは人間相手のスキルであるため、それぞれに期待できる「スキルの再現性」が異なるからでしょう。でも本当にそうでしょうか?起業家が学びを通してスキルを向上させていったとき、それまでのやり方と全く違うやり方で成功イメージを向上させられるのなら、途中で方針をガラリと変えるのはアリだし、最初からそういう前提で「学ぶためのビジネス」というのがあってもいいんじゃないかとも思います。

「再現可能な起業スキル」と「ビジネスプラン」

本記事のタイトルを忘れてしまうところでした。そう、テーマはビジネスプランをいつ作るか、です。特に小売りやバイオテクノロジーといった初期投資が掛かる分野ではなくITとくにWeb業界においての起業ならば、ここまで述べてきたことを踏まえて1案が考えられます。

【ステップ1】
まず「未経験」の段階で作るべきは「とにかく1円売り上げるまでのプラン(持続可能性や赤字黒字はとりあえずおいとく)」です。最初の1人のお客さんに売れればゴール達成なので、割と「未経験者」でも計画を立てやすいと思います。そこには、どうやって見込み客を見つけるかとか、最低限お金をもらえるレベルのサービスを試作品でもいいから作り上げるとか、自分が作るのでなければ作れる人を探して依頼するとか、諸々のボトムアップスキルが含まれてきますが、それらのボトムアップスキルをビジネスプランの作成と同時に獲得するのでもよいでしょう。

【ステップ2】
そして、1円売り上げることが出来たならば、それをきちんと儲かる形にもっていくためのプランを考えることになります。このときに、最初に売った商品やサービスの延長線上でビジネスモデルを考えてもいいですし、多くのプログラマのように、1から作り直すというのも当然アリでしょう。それは1円売り上げた時点でどうするのが適しているかきっとわかっているはずです。

というわけで

書く前から予想してましたが、結局「リーンスタートアップよりもさらに堅実なやり方」といった内容になりました。

私としては、1円の売り上げは達成しており、ボトムアップスキルも部分的に経験できているという段階であり、現在は上記の【ステップ2】のビジネスプランを作っているところです。しかし1円売り上げた理由は運によるところがほぼ100%なので、まだ【ステップ1】は終わっていません。しかしプログラマなだけあって、既に「1から作り直したい病」というのが出てきてます。

起業直後にこの記事のようなことを自分が分かっていたら、【ステップ1】をもっと早く終えられてたんじゃないかとも思いますが、「1から作り直す」という点では今後のアクションは「1円売り上げる」ところからのやり直しになりますので、まぁ経験は糧になっているとも言えそうです。なのでこの記事の内容は単独での新規事業を狙う弊社(アドファイブ株式会社)2期目の大きなテーマです。

ではまた明日。