米国の超有力アドテク企業の来日セミナーに行ってきた
毎日ブログ書く宣言からのべ14日目。(やっと2週間…次は30日を目指す)
programmatic chaos というセミナーイベントに行ってきました。主催はMaxifierというデータに基いて広告キャンペーンを半自動的に最適化するソリューションを提供してる会社です。ほかにPubMaticというメディア側の広告ビジネスをほぼ全面的に支えるプロダクトラインを持った会社、MediaMathというDSP/RTBの世界的先駆者である会社、リクルートや、リクルートのデジタル広告最適化ビジネスを作り上げた人が起業したKAIZEN Platform社など豪華な登壇者がそろったイベントでした。
PubMatic社
パブリッシャー側に総合的な製品ラインナップを提供するPubMatic社について。
RTBというと日本では「DSPベンダのプレイヤ数増大とそれを取り舞く3PASやDMPなどの関連製品ベンダとコンサルティングビジネス」、「SSPベンダのボリューム数競争」という2つの部分的な構図をイメージするけれど、米国ではPubMatic社のように媒体社の広告事業の戦略面まで踏み込んだプログラマティック広告ソリューションが既に実際に使われて成功事例も1つや2つではないという、圧倒的な進歩の差を感じました。
日本国内ではプライベートDMPを媒体社が導入する事例が進んでいるようですが、PubMaticのソリューションはDMPが可能とするターゲティング広告商品の開発といったレベルにとどまらず、オーディエンスのバイラルさえも設計対象であり、コンテンツ消費者をあたかもメディアの延長線上にいるかのように考えて戦略的にメディアを運営していく、それを支援するフルラインの製品群を提供しています。
Maxifier社
Maxifier社は名前だけ聞いたことあるだけであまり製品の詳しい内容は知らなかったのですが、DSPやDMPなどのプラットフォームが乱立しキャンペーン設計の組み合わせが複雑化するなかで、データに基づいてキャンペーンの最適化支援をしてくれる製品を提供する会社のようです。
Maxifier社の製品はグローバルではものすごく実績があるようですが、日本国内では先行しているリクルートが使いこなすことに成功してるくらいで他の広告主はDSP/3PASの導入が一巡してDMPに目線が移ってきたフェーズにすぎないという日米での進歩の差がここでも如実に感じました。
そもそも複数のDSPを並行して使いこなすという広告予算規模ってどれくらいなんでしょう?懇親会でMaxifier社のアカウントセールスの方に話を伺ってみると、10億インプレッション程度のログデータを扱うクライアントしか対象としてないということでした。
国内のRTB広告市場では、DSPのベンダお仕着せ機能の運用をはじめDMPを使った独自のオーディエンス設計などをきちんと行える広告運用者が少なすぎて、アドテクの進化に使う側が追いつけてない課題があり、それを解決するには運用者に教示したりキャンペーン設計をナビゲートしたりシミュレートしたりするシステムが必要だと思って、弊社は今そこを狙ったプロトタイプ開発を進めています。だから、Maxifier社でもそういうシステムの延長線上に億単位のインプレッションを元にキャンペーン最適化を行うような「プロ仕様」の製品が位置づけられていると思っていました。
しかしMaxifier社は、本当にイケてる広告主しか使いこなせないような「プロ仕様」の製品をそのまま提供しているようでした。アカウントセールスの方は、「弊社の基準となるデータボリュームをクリアしたうえで弊社の様々な最適化ソリューションが活用いただける」と強調していました。つまり、上澄みの最も難しくてもっとも利益率の高いところだけを相手にするというビジネスです。本当にグローバル目線というのは次元が違うと思いました。
チマチマと「教示機能」のようなものも含めて検討している自分は何なのだろう?と思ってしまいます。
パネルディスカッションでふと垣間見た欧米ベンダの苛立ち
講演のあと行われたパネルディスカッションでは特に日本のアドテク市場についての話が何度も出てきました。欧米のアドテク業者が日本市場に入り込むときの営業での語り口が、そっくりそのままダイジェスト的に切り取られたようなパネルディスカッションでした。
パネルに登壇した各欧米ベンダ幹部たちは、日本の媒体社側を訪問して、媒体社の課題を掘り起こし、それを自分たちのプロダクトがどう解決しうるのかについて誠実に議論を重ねようとするスタンスのようでした。テクノロジーを全然わかってないのでそこから議論を出発しなければならない、といった苛立ち交じりの発言をしたパネラーもいました。
これはとても欧米らしいやり方だと思います。何か製品を提供する場合、それを使いこなす主体は製品を買った側であり、製品提供者は購入者が自律的に製品を使いこなせるようになるのをサポートするというスタンスです。そういうスタンスが商習慣として定着しているなら、ベンダは手離れよく製品を提供でき、カオスマップも綺麗に業界で分業してる姿になるでしょう。
日本市場での「分業」特性
しかし私が思うに日本市場はもっとプロダクト提供者とプロダクト使用者が癒着しています。リスティング広告(一人で食べているフリーランスエンジニアでさえ簡単に使えるくらい手離れよく作られてるのに)ですら代理店に丸投げという広告主、ブランディング用途で純広告を売るのが基本という揺るがない思想をもちながら実体はレップに丸投げ同然の媒体社、という機能的でなく責任感に基づく「分業」体制が日本の商習慣の特徴だと思います。欧米的な観点でみたときのこの癒着感が、手離れよく売って利益率を高めようとするアドテクベンダの思惑が外れがちな理由ではないかとも思います。
このあたりの事情を分かっているイケてる広告代理店は、欧米のアドテクをいち早くテスト導入し使いこなすまで投資を重ね、丸投げ体質のクライアントとうまくバランスを取ってビジネスを回してたりします。(独立系のあの会社とか、マス広告代理店系のあの会社とか、ネット広告代理店業界N位の子会社であるあの会社とか。)
平たく言うと、
- 欧米市場=「たすけてくれよ」「もちろんですとも」
- 日本市場=「よろしくたのむ」「おまかせください」
という感じでしょうか。