広告ナビゲータ・広告シミュレータの機能要件(1)

毎日ブログ書く宣言から3日目。

今日のテーマは弊社(アドファイブ(株))で7月から開発予定の「広告ナビゲータ・広告シミュレータ」の機能要件について。

もともとDSP/RTBは金融トレーディングの世界にいた人たちによって作られた技術だが、金融の世界ではマーケット取引機能を持ったトレーディングシステムインフラの上で、トレーダーがリスク管理ツールやポートフォリオ管理ツール、投資戦略のマネジメントツールなどの様々なトレーディング支援ツールを使って日々の業務を行っている。したがってRTB広告の世界も、扱うターゲティング広告が複雑化し、広告案件やマーケティング戦略が複雑化するにしたがって、広告運用トレーダーの業務負荷を軽減する様々なツールが必要になってくるのは当然の流れであり、弊社では今からそのあたりに注力して早々に製品をリリースしたいと考えている。

その第一歩として、広告トレーダーの広告運用をカーナビのようにナビゲーションしてくれる「広告ナビゲータ」と、実際に予算投下して広告を打つ前に広告運用プランを(自動車教習所で公道に出る前によくやるアレのように)シミュレートできる「広告シミュレータ」について、機能要件を検討する。

背景とコンセプト

DSPを使ったターゲティング広告配信には以下の課題がある。

  • 広告プラン(キャンペーン設定)の定義が難しい
  • 最初に「検証すべき仮説」を立てることがそもそも難しい
  • 仮説を検証するのに計測指標のどこを見ればよいか難しい
  • 仮説検証を経た後に、次の打ち手を考えるのが難しい
  • 打ち手を変えたときどうなるかの予測が難しい
  • PDCAのサイクルを回すたびに広告費がかかる
  • 広告案件(CPA重視かUU重視か等)によって求められるオペレーションが大きく異なる

そこで、以下の要件を満たすプロダクトが求めらていると思う。

  • 広告運用プロセスのサポート(ナビゲーション)
    • 広告要件を入力すると広告運用シナリオをレコメンしてくれる
    • シナリオを選択すると、まず検証すべき仮説と広告プランをレコメンしてくれる
    • 広告プランを運用して結果(指標)を与えると「分かったこと」をレポートしてくれる
    • 「分かったこと」に応じて次の打ち手と予測PV/UU/CTR/CVR/CPAをレコメンしてくれる
    • 以上について、案件単位でプロジェクト管理できる
  • 予算を使って実際に広告配信する前に結果を予測できる(シミュレーション)
    • オーディエンスをモデル化することができる
    • モデル化は、モデルパーツを組み合わせるだけでできる
      • パーツはオーディエンスの仮定を表現する語彙のようなもの
    • モデル化には数種類のアプローチを用意する
      • オーディエンス一人一人をモデル化するエージェントアプローチ
      • 全体傾向を少数パラメータでモデル化するパラメトリックアプローチ
      • データに合わせてパラメータ数を自動的に調整するノンパラアプローチ
    • 競合の広告クライアントをモデル化することが出来る
      • 入札価格算定、配信ボリューム、競合セグメントなどを予測できる
    • モデルに実データ(各種指標)を食わせるとパラメータを推定して可視化する
    • パラメータ推定したモデルを使って、新たな広告プランのシミュレーションが出来る

想定顧客ターゲット

  • トレーディングデスクを設置したいがDSP導入コストに加えて、運用担当者にノウハウを教育するまでに莫大なコストがかかるため、2の足を踏んでいる広告代理店、大手クライアントのデジタルマーケティング部門
  • DSPでのターゲティング広告を検討しているが、クライアントからの広告案件にフィットするかどうか「やってみなければ分からない」せいで二の足を踏んでいる広告代理店
  • 既にDSPを運用していて成果もあげているが、運用者の能力のバラつきが目立つことが課題となっているトレーディングデスクやDSP業者
  • 新しいターゲティング広告商品を開発したいと思っているメディアや、DSP業者と関連するアドアプリケーション業者で、過去の配信データを使って別のシナリオによるシミュレーションを行いたいと思っているケース

機能検討1:広告要件から運用シナリオをレコメンする

これはカーナビにたとえると現在地と目標地と交通手段をインプットすると経路が出てくる機能に相当。

【目標地点】ターゲティング広告案件に課せられる要件

  • 予算と実施期間
  • ボリュームの目標値(インプレッションUU数、広告主サイト誘導UU数)
  • 費用効率の目標値(eCPM、CTR、CVR、CPA
  • どの目標を重視するかのプライオリティ

【現在地】案件実施の出発点となるリソース

  • 初期予算/残り予算
  • これまでの広告配信実績に基づくセグメントデータ
  • 広告運用中の場合、現在運用中のセグメントや広告プラン

【経路の定義】広告運用シナリオとは

  • 要件を満たすために広告運用「タスク」を組み合わせたもの
  • タスクは階層構造になっていて、上位タスクの要件を満たすために下位タスクを分割する
  • トップレベルのタスクは「広告要件の中で最重要の目標を満たすためのタスク」が並ぶ
  • 各タスクは「実施可能な広告プラン」と「上位目標達成に寄与するKPI」の組み合わせ
  • 各タスクのKPIには、例えば「セグメント探索の進捗」のような中間的な指標も用いる
  • シナリオは全自動実行させるのでなく広告運用者がシナリオに介入する余地を持たせる

【交通手段と道路情報】広告要件を満たすために広告運用シナリオで考慮すべき点は

  • リソースの配分
    • 期間中の予算消化ペース
    • セグメント探索用/本番配信用それぞれの予算・期間
    • 本番セグメントが複数の場合の予算配分
  • セグメントの把握
    • セグメント作成に利用可能なオーディエンス属性メニュー
      • デモグラ、ジオグラ、インタレスト、時間帯、地域、etc
    • セグメントごとの投資効率、ブランドごとのCV状況や広告反応度合い
  • 買い付け/配信手段の把握

【探索結果表示】求められるレコメン機能とは、

  • そもそも要件は実現可能か→実現不可能な場合はレコメンを出せない理由を出力
  • 実現可能な場合は目標値のプライオリティに従って大まかにシナリオを選ぶ
  • この時点のレコメンでは、タスク階層の深いところまで明確にはせずにトップレベルのタスク分割までを明確にする
  • 要件によってトップレベルの分割の仕方が複数あり得る場合は、簡単なサマリ情報とともに列挙

【途中のナビOFFモードと経路再探索、経路編集】

  • レコメンされたシナリオを中断したり、途中からシナリオを開始したりできる
  • レコメンされたシナリオを一部手動で修正して利用できる

量が多くなり書ききれないので

続きは明日書きます。

章立てとしては

  1. 背景とコンセプト→執筆済
  2. 想定顧客→執筆済
  3. 広告ナビゲータ
    1. 広告要件からのシナリオのレコメン→執筆済
    2. ナビゲート中のシナリオ全体と現状の可視化
    3. タスクごとのナビゲート(広告プランとKPI)
    4. タスク遷移のナビゲート(KPIの解釈レポート)
    5. シナリオ探索アルゴリズム(レコメンの仕組み)
  4. 広告シミュレータ
    1. データフィードと指標予測
    2. オーディエンスのモデル化
    3. エージェントモデル
    4. パラメトリックモデル
    5. ノンパラモデル
    6. 競合クライアントのモデル化
    7. パラメータの可視化
    8. 各種指標の予測アルゴリズム
  5. 実装
    1. システムアーキテクチャ
    2. 使用言語とライブラリ

ではまた明日。