磯島拓矢著「言葉の技術」を読んだ
広告テクノロジーの仕事をしてるのだから広告について勉強しようと思って磯島拓矢著「言葉の技術」を読みました。
筆者は電通のクリエイティブディレクターでコピーライティングのプロ。本質的なことしか書いてないので90分くらいでさらっと読めて、すごくためになります。
- 作者: 磯島拓矢,吉森太助
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2014/04/18
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
コピーライティングの具体的なテクニックは本書を読んでいただくとして、以下ではこの本の構成で巧いなぁと思った点について。
この本のなかで著者は、コピーライティングのテクニックを一つ一つ読者に伝授してくるのですが、人に何かを伝授するという行為は「上から目線」になりがちです。
そこで筆者はくりかえし「エラそうですみません」と前置きしつつ、具体的なテクニックを具体例を挙げてわかりやすく説明していきます。
ですがあまりにも「エラそうですみません」と何度もいうので、不思議に思いました。そうしたら、本の最後でその答えが分かりました。
筆者は、コピーライティング、ひいてはコミュニケーションの目的を、「良い関係を構築すること」としているのです。
これはなるほどと思いました。
ちょっと僕の感想が多めになりますが、僕の「なるほど感」を以下で少し。
例えば、企業が商品を作って売る、そのことによってお金が動きますが、これは財と財の等価交換ですから、対等です。つまり、コピーライティングの目的を「ものが売れるようにする」ということにしてしまうと、財の等価交換を促す以上のことはありません。等価交換というものは極論をいえば、してもしなくてもいいものでしょう。
だから、「交換したほうがよい」、そういう状態を作る必要があります。それがなにかといえば、当然、企業と消費者の間の関係性をよくする、つまり企業が存在して商品を提供することによって社会がよくなる、というところに目的があると思うわけです。
商品購入という財と財の等価交換は、よりよい社会すなわち企業と消費者のよい関係性を築く手段だとみるべきでしょう。
ならばコピーライティングの本質は、メッセージの伝え手と受け手の間の関係性をよくすることである、そしてその中に商品の交換のような経済行為も含まれていく、そういう見方にあると思います。
筆者はそのことを意識して、本書の読者との間に本書を通じて「良い関係」を築こうとしています。
大変すばらしい思想だと思います。
電通の社員というのは、なんかよくわからない人たちだったけど、この本読んだだけで尊敬しちゃうなぁ。