あと二十数年で世界がガラッと変わる件

あんまり語られてないことだけど僕が重要だと思っていることを書きます。

最近、特に米国の高等教育機関(大学や大学院のことね)のそれもトップ層の教育コンテンツが無料で公開される動きが増えてきた。スタンフォードやMIT、ハーバードもあったかな。

日本でも、それもネットではなくテレビで視聴できる放送大学の授業はずいぶん前からある。ただ日本は多くの人がテレビを買える豊かな国なのでもともと教育水準が高い。

世界の国々の多くは日本よりも経済的に貧しい国だが、それらの国でネットが普及している。特にスマートフォンは一台5000円程度で買える。5000円というのは例えば日本より30倍貧しい国の人からすると日本人の感覚でいうところの15万円くらいのコスト感だと思うが、それは十分庶民的に手が届く代物である。

電話を引くには物理的に電話線を引かなければならなかったが、無線IP網は鉄塔を立ててコモディティな通信機器を設置するだけで良い。先進国においては鉄塔を立てる時の建設コスト(用地の買収・レンタルコスト+人件費に起因)が高いが、途上国であればそのコストが安いことも手伝って、インフラ整備が急速に進んでいる。

そうすると、家族で一台スマホを買って、普段は子供が勉強のためにそれを使い、遠隔地の親戚や知人と連絡しあうときだけ親が使う、という風にすれば子供がスマホを所有しているのとほぼ同じ状態になる。

貧しい国では家族の仕事を子供が手伝うことが多く、そのせいで学校に通えない子供が多くいるが、スマホならそうした仕事のスキマ時間を使って勉強することが出来る。だから、英語が読めるところまでのリテラシがありさえすれば、あとは一人で学習を進めることは可能だ。

歴史の偶然なんだろうけど、英語というのはもともと文字の数が少ない。基本的にアルファベット26文字で何でも表現できる。他の言語ではこうはいかないだろう。日本語を学ぶ外国人が漢字でつまづくことのなんと多いことか。英語はその点で優位性が元々ある。さらに世界の途上国は帝国主義時代の名残で英語はもちろん、スペイン語、フランス語が公用語になっていることが多い。それらの言語で書かれたネットコンテンツは大量にある。

このように、途上国の子供がネットでセルフスタディを行うのに好都合な諸々の事情が、ジグソーパズルのピースがピッタリかみ合うように揃っているのだ。

考えてみてほしい。スマホの普及が2010年に始まったとして、その時点で10歳の子供が25歳になるのが2025年である。25歳というのはグーグルの創業者がグーグルを作った年に近い年だ。そしてグーグルは創業来10年ほどで世界を大きく変えた。そうするとプラス10年して2035年あたりがポイントになってくる。

シリコンバレーの若い起業家の輩出を支えているのはアメリカのスタンフォード大学という高等教育コミュニティではあるけど、それもネットに接続可能な人口の母体が大きくなれば、天才の割合は一定数いるので下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的な論理によって途上国において凄いことをやるやつは確実に一定数は出てくるはずだ。それに、そもそも教育コミュニティというのもネット上のアプリケーションとして実装可能である。大学教授に気軽に質問できるアプリなんてすぐ作れるし、Quoraみたいなサイトで質問したっていい。

これは革命である。

教育こそが全てを変えうる起爆剤であることは歴史が証明する事実だ。宗教革命から民主主義へとつながったきっかけは活版印刷による聖書の普及だった。ネットというのは活版印刷発明以来の情報革命といっていい。そして変化の大きさも活版印刷のときとは比べ物にならないくらい大きい。紙の本と違ってデジタルのビットは転送コストがほぼゼロだからだ。

途上国で出現する天才たちが始めること、その多くはソフトウェアで実現されるだろう。そしてここにもう一つの革命があることも忘れてはならない。産業機器や社会インフラの多くが、今後10年でインターネットにつながるようになり、今までインターネットアプリと言えば情報処理機器がメインだったのが、組み込みソフトがネットアプリになる時代になるのだ。いわゆるモノのインターネット、Internet Of Thingsである。その変化たるや情報機器のネット化の比ではない。産業革命以来の大変化がこれから訪れるのだ。

つまり、活版印刷以来の大リテラシー革命と、産業革命以来の大生産プロセス革命が、この先20数年で静かにそして着実に進行するのである。

2035年、あなたは何をしているだろう?