やりがいと残業代の均衡点は市場が決める

近日発売の「残業代ください」の本について話題になってますね。

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。って残酷な言葉だと思う。」っていう見方もまぁアリだとは思うけど、みんな本当にやりがいより残業代が欲しいのだろうか。

(従業員)「やりがいが無いのでついダラダラやっちゃいます、やりがいが無いのは経営者のせいです、なので代償として残業代ください。やりがいがあればもちろんテキパキやります。」
(経営者)「確かにやりがいの無い仕事で申し訳なく思ってる。やりがいのある仕事を提供すれば人件費が割安になって経営者は得をするのだから、もちろんやりがいは可能な限り提供する。」

これって既に市場価格で均衡してるってことですよね。両者のインセンティブが相反するのは繰り返し語られてきた自明なことなのであとは市場の原理でバランスとるだけですが、その均衡点が今の状況っていうことですよね。

もちろん、こういう本が売れるというのも、そういう「見えざる手が決めた社会的ベストバランス」ではどうしてもうっぷんが溜まってしまう人向けに安く精神的やり場を提供するという市場が形成されているということなので、良いことだと思います。

うん、世の中良く出来てると思います。

補足)この場合の均衡というのは、需要と供給の均衡のような構造ではなくて、例えば工場で何か製造するときにどこまで機械でやってどこを労働者にやらせるかというバランスが市場価格でだいたい決まる、みたいなニュアンスです。技術革新によって機械設備コストが下がれば労務コストが少なくて済むように、経営革新によって「やりがい」を低コストて提供できるようになれば同じ生産物を生み出すのに必要な残業代は少なくて済む。そういうことを言うと「機械設備はその時点での技術水準という限界があるけど経営水準はいくらでも工夫が出来るじゃないか、いっしょにすんな」って思うかもしれませんが、そんなことは無いです。やりがいを生み出す経営のノウハウも人類の科学技術に関する知と同じくらい試行錯誤と積み重ねによって社会全体で進歩させていくものでしょうから。