ネイティブ広告を分解して考える

ネイティブ広告とは「コンテンツと広告でUXが一致する」というのが出発点で以下は詳細。

UX=コンテキスト+クリエイティブ

UXの構成要素は「コンテキスト」と「クリエイティブ」の2つであり、コンテンツと広告で両要素とも一致しているものがネイティブ広告。以下、具体例。

グーグルのリスティング広告はネイティブ。コンテキストは「キーワードにマッチする有益な情報が欲しい」、クリエイティブはWebリンクとリンク先の短文サマリ、いずれもコンテンツ・広告で一致。

アドセンスはあまりネイティブでない。コンテキストは「訪問サイトに期待するコンテンツ」、クリエイティブは「訪問サイトのコンテンツフォーマット」。コンテキストはそこそこ一致させてくるが、クリエイティブの一致は全く期待できない。アドネットワークはコンテキストやクリエイティブの一致よりもリーチ規模拡大を志向し、DSP/RTBはコンテキストの一致性よりもパーマネントなオーディエンスそのものを見る。

テレビCMはだいたいネイティブ。コンテキストは視聴者が受動的なときは「その時間帯を感情的に満たしたい」、積極的なときは「その番組に期待する内容を得る」であり、クリエイティブは映像コンテンツ。視聴者が積極的な場合、リアルタイム性や速報性のあるスポーツ中継等のコンテンツ以外はビデオ録画してCMカットされる可能性があるが、多くのテレビ視聴者がテレビを見る目的は暇つぶしであることが多いので、ネイティブ広告として機能している。

新聞雑誌広告もだいたいネイティブ。コンテキストは「一定のテーマのもとでライフスタイル・趣味・知識について情報を仕入れる」であり、クリエイティブは「レイアウトの整った写真(イラスト)と文章、見開きの質感等」である。

「コンテキストの一致」と「クリエイティブの一致」の比重

マスメディアはその莫大なリーチ数ゆえに、一部でもコンテキストをとらえられればペイするため「コンテキストの一致性」については若干甘くても成立する。TVCMと番組がだいぶ内容的に異なったり、新聞広告に通販カタログ的なものがあったりしても、ペイする。しかしクリエイティブが異なるとパッケージングしづらいので、クリエイティブの一致性は大事。

ネットメディアの場合、マスメディアと比べて(参入コストが低いので)メディア数が多く、よって1メディアあたりのリーチ数が少ない。よって「コンテキストの一致性」はより強く求められる。しかしパッケージングの柔軟性が高いためクリエイティブの一致性は比較的甘くてもOK。画一的なクリエイティブを多様なサイトへパッケージング可能。よって昨今のアドネットワークやプログラマティックマーケティングの勃興は自然な流れ。

大まかなコスト構造

クリエイティブコストは固定費、メディアコスト(=リーチ数*単価)は変動費。

マスメディアは単価は安いがリーチ数が莫大なためメディアコストも高くなり、高いクリエイティブコストでもペイする。このバランスが崩れるとクリエイティブはチープになる。

ネットメディアはリーチ数と単価それぞれの高低で以下のように4パターンに分けられる。

  • リーチ数=多、単価=高

これはFacebook, Twitter, マスメディアのデジタル版など。FBやTWはネイティブ広告のプラットフォームを提供しているし、マスメディアのデジタル版は記事広告を良くやっている。

  • リーチ数=少、単価=高

GramMediaとか。メディアコストをペイする範囲でクリエイティブを制作する。

  • リーチ数=多、単価=低

比較的単価の高いYahooの純広や、リスティングやアドネットワーク上で大規模に出稿する場合。定型的なテキスト広告やバナー広告クリエイティブなので制作費はチープ。

  • リーチ数=少、単価=低

リスティングやアドネットワーク上で小規模に出稿する場合。定型的なテキスト広告やバナー広告クリエイティブなので制作費はチープ。

ネイティブ広告で必要なテクノロジ

ネイティブ広告はその定義上、固定費たるクリエイティブ制作費はバナーやテキストよりも掛かるため、変動費であるメディアコストが相応の規模である必要がある。上述したようにメディアコスト=リーチ数×単価である。

リーチ数を多くするには以下のいずれかしかない

  • FBやTWのような単一のサービスで莫大なユーザ数を抱える
    • CMSWebサービスシステムと連携するテクノロジ
      • システム構築上の話なので技術的な課題としては比較的容易な部類
  • アドネットワーク化して合計で莫大なユーザ数にする

単価を高くするには

  • コンバージョン率を高めてCPAの観点で割安にする
    • コンテキスト一致性を高めるテクノロジ
  • ブランディング効果を高める
    • 信用あるメディアのみに配信でき、ブランディング効果を可視化するテクノロジ
      • 広告主・メディア相互の認証を自動化する技術が必要
      • ブランディング効果を計測可能な指標にする技術(サイト滞在時間、SNSシェア率等)

検討課題

テクノロジ面の課題に加えて、以下がある。

  • コンテキストごとに最適なクリエイティブが異なるのではないか?
  • バナーなら「他のサイトでも見たよこれ」でもまぁ許される、ネイティブはそれで良いのか?
  • Webよりも多様なスマホネイティブアプリにおけるネイティブ広告クリエイティブとは何か?