無知のキープ

前回のエントリの後編は後日書きます。今日は最近思いはじめた「無知のキープ」について。

プログラマとして仕事をしていくうえでプログラミングの知識は重要です。例えば、Javaを使って仕事をするならJavaの文法やライブラリ、さらにミドルウェアフレームワークについても色々知っていたほうが良いでしょう。

Java以外にもプログラミング言語はたくさんあり、関数型、手続き型、宣言型、等々のパラダイムも多様です。

さらにWebアプリについても、サーバサイドとクライアントサイドで必要となる知識は異なりますし、最近だとデータ分析スキルも重要ですがそれもHadoopのようなデータ処理インフラの知識とRのような分析アルゴリズム自体の知識はかなり異なります。そうしたフレームワークや、ミドルウェアや、アルゴリズム一つ一つ取ってみても色んな実装があり、それぞれに深く納得させられるような存在背景があります。

何が言いたいかというと、「学んだほうがいい知識」が爆発している、いいかえると知識がインフレしてるんじゃないかと思うのです。

僕が「プログラマ35歳定年説」のまさにその35歳になったせいで、そんなことを思い始めた可能性もありますが、むしろ僕は最新の知識のキャッチアップ自体は好きで、ついつい新しいものに手を伸ばしがちなくらいですから、まぁまだ定年ではないと思ってます。

というわけで、知識のインフレという現象が仮にあるとしたら、どうやって「使えるスキルを持っている状態」を維持向上させていったらよいか考える必要がありそうです。

で、それは以下の2パターンのいずれかになると思いました。

  • ポートフォリオ的な考え方、戦略的に投資対効果を図りながらスキル蓄積する
  • スキルを資産と考えず、「スキル獲得速度」というメタスキルを資産とみなす

前者は、割といろんなところで言われてることだと思います。遅延学習法とか、Yagniとか、そういうやつですね。それはそれでアリだと思います。特に勉強自体が楽しめる場合は、たとえ習得したことが後にあまり役に立たなくても人生の満足度に貢献するので、この手法はアリですよね。

後者は、これが最近僕が思っているのですが、新しいことをすぐに身に着けるスピードというのが、知識のインフレ化が進行するにつれて重要性を増していくんじゃないかと思うのです。ストックよりもフローを重視する、という考え方です。

インフレ耐性のある資産、実経済では不動産なんかがそうだと思いますが、そういう知識資産を獲得することは重要でしょう。でも知識のインフレ時代において陳腐化しにくい知識資産って、なんでしょうね。ちなみに、コンピュータサイエンスの基本知識は資産というよりむしろ必需品というべきでしょう。そうすると、「幅広く深い教養」みたいな、知識と呼ぶには漠然としすぎてるくらいのものしか資産にはならないんじゃないかと思います。

では、資産を蓄積できない社会でサバイバルするにどうしたらよいか。お金の場合だったら、「稼ぐ力」を持つしかないです。つまり、「新しい知識を素早く得る力」を持つしかないんじゃないかと思うわけです。

そうすると、「有用そうに見える知識」に出会ったときに大事なのは、「それを自分のものにすること」以上に、「いかに速く自分のものにするか」ではないかと思うのです。

もちろん、「色んな知識があれば、新しい知識を自分のものにするスピードが向上する」という考え方はあるかもしれません。それはあると思います。その場合にも、後の「習得スピード向上に役立つ知識を蓄積する」という風に、上述した2パターンで前者のことをする際に後者を意識するということが大事になってくるでしょう。

なので、新しい知識は面白そうなので直ぐに飛びついてしまいがちな僕みたいなタイプの人にとっては、「無知をキープする」と心がけるくらいでちょうどいいんじゃないかと思うわけです。「夕飯を美味しく食べるために、間食はさける」みたいなイメージです。

そういうわけで、知識のインフレ化が進んでいるように思われるので、無知をキープして、代わりに習得スピードを意識していこうと思います。


…んー、でもやっぱこれって35歳定年現象なのかな???